この10年間、世界的にさまざまな革新(イノベーション)が起こり、人々の暮らしは便利になりました。また日本では、個人がモノを気軽に売り買いできるフリマアプリや、スカウト型転職サービスなどの新たなビジネスも生まれています。これらは「ベンチャー企業」と呼ばれる企業によって生まれたものです。
ここでは、ベンチャー企業について解説。ベンチャー企業の定義や中小企業、スタートアップなどとの違いや、資金調達方法、ベンチャーに多い分野についてもご紹介します。
ベンチャー企業の定義とは
ベンチャー企業には「中小企業」のように明確な定義があるわけではありません。
ただ、日本政策金融公庫が発行した「現代のベンチャー企業を知る」によると、以下のような特徴を持つ企業が「ベンチャー企業」と呼ばれる場合が多いようです。
- 革新的なサービスを開発している
- イノベーション(革新)を生み出す企業である
- 設立数年程度の若い企業
参考:日本政策金融公庫「現代のベンチャー企業を知る」
既存とは異なる新しいサービスによってイノベーション(革新)を生み出している、と言えばイメージがしやすいのではないでしょうか。
また若手人材が中心となって活躍していて、将来性・成長性が期待できる企業であることも、ベンチャー企業の特徴といえるでしょう。
中小企業とベンチャー企業の違い
中小企業とは、「企業規模」で分類された会社の総称です。
中小企業には中小企業庁で定められた明確な条件があり、主に以下の企業が法律上「中小企業」として扱われます。
【中小企業の定義と条件(原則)】
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社 又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社 又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
※原則条件から外れていても中小企業と定義される場合や、条件に当てはまっていても中小企業とされない場合(みなし大企業など)があります。
引用元:中小企業庁:「中小企業・小規模企業者の定義」
よって「ベンチャー企業であり、中小企業である」という会社もある、ということになります。
スタートアップとベンチャー企業の違い
スタートアップとベンチャー企業はよく似ています。どちらも革新的なアイデア・サービス・技術などでイノベーションを生み出していく場合が多いからです。
ただし、スタートアップとベンチャー企業では「目指しているゴール」が異なります。
- スタートアップ:短期間でのイグジット(IPOやM&Aによる利益獲得)を目指している
- ベンチャー企業:中長期的に企業成長を目指す
なおスタートアップの特徴については、以下のコラムでくわしく解説しています。よろしければ参考にしてみてください。
https://virtualoffice-resonance.jp/column/startup/
スモールビジネスとベンチャー企業の違い
スモールビジネスとは「少人数で行う小規模なビジネス」のことを指します。
スモールビジネスを行う企業では、事業内容を絞ったり特化したりしながらビジネスを手掛けているのが特徴です。
あくまでも「企業やビジネスの規模感」に対する定義であるので、少人数のベンチャー企業で、かつミニマムな規模の事業を手掛けている場合も「スモールビジネス」といえます。
ただし、スモールビジネスを行っている企業には、再現性の高い既存事業を展開しているケースが少なくありません。この特徴はベンチャー(新規事業)には当てはまらないので、必ずしも「スモールビジネス=ベンチャー」ではないのです。
ベンチャー企業の資金調達方法は?
ベンチャー企業は「ベンチャーキャピタル」という機関からの出資を受け、資金調達をするケースが多く見られます。またIPO(株式公開)によって出資者を募ったり、一般的な企業のように融資や補助金、助成金を利用したりといった場合もあります。
- ベンチャーキャピタルとファンド
- IPO
- 融資、補助金、助成金
それぞれくわしく見ていきましょう。
ベンチャーキャピタルとファンド
ベンチャーキャピタル(VC)とは、文字通りベンチャー企業(厳密にいうと『成長が見込まれる未上場企業』)へ先行投資をする会社を指します。ベンチャーキャピタルは「ファンド」という基金を作り、出資者(株式を買う人)を募ります。
ベンチャー企業の成長後は、株式公開をした段階、またはベンチャーキャピタルが支援していたベンチャー企業を買収した段階で株式を高値で売却。キャピタルゲインといわれる利益を得る、という仕組みです。
ベンチャーキャピタルはベンチャー企業に対しコンサルティングや支援などを行ってくれる場合がほとんどです。これはベンチャー企業が成長したあとの差益を得るのが目的ではあるものの、ベンチャー企業からすれば「資金調達に協力してくれて、かつ事業成長のサポートもしてくれる」とも捉えられます。
うまく活用すれば、短期間で事業を成長させられる可能性もあるでしょう。
IPO
IPO(Initial Public Offering)とは、上場して誰でも買える株式を公開する、という意味です。
上場前の会社が発行する株式は限られた人物のみしか買えないものです。一方、IPOを行うと不特定多数の人や会社が株式を取得できます。株式を追加発行し続けることでより多くの出資を募れるようになる、というわけです。
IPOはベンチャー企業以外にも、スタートアップが利用することで知られています。
融資、補助金、助成金
ベンチャー企業も一般的な企業と同じく、融資、補助金、助成金などを利用して資金調達をするケースが多く見られます。
ただし株式の発行による出資と異なり、融資は返済の必要があること、補助金・助成金は必ず申請が通るわけではないことに注意しましょう。
ちなみに、政府では「企業のベンチャー投資促進税制」「エンジェル税制」など、ベンチャー向けの支援政策を行っています。こちらもぜひご参考にしてみてください。
参考リンク:新規事業・スタートアップ (METI/経済産業省)
ベンチャー企業向けの業種・分野とは?
「ベンチャー企業」と定義される企業は、特定の業種・分野に偏っている傾向が見られます。
以下の分野はイノベーションによる変革をもたらす可能性が強く、ベンチャー企業に多い分野だといえるでしょう。
- IT分野
- ヘルスケア(医療・看護・介護・福祉)
- 人材サービス業
- 環境保護
IT分野
「ベンチャー企業=IT系の企業」というイメージが強い方も多いのではないでしょうか?
事実、ベンチャー企業にはIT系分野の会社が多く見られます。ただ最近の傾向としては、「IT技術×別の分野」というふうに、これまでアナログかつ非効率だった作業をDX化し、革新を生み出しているケースが急増しています。
ヘルスケア(医療・看護・介護・福祉)
医療や看護、介護、福祉といったヘルスケア関連でも、ベンチャー企業が日々誕生しています。
ヘルスケア関連では、IT技術で既存のサービスをより補強したり、疾病予防などの「予防ケア」に着目したサービスを提供したりといったケースが多いです。
人材サービス業
「仕事を探す人がアクセスし、紹介する」というのが通例だった人材サービス業ですが、近年では「ビズリーチ」のようなスカウト形式の転職サイトなど、ベンチャー企業による新たなビジネスが創出されています。
環境保護
SDGsの取り組みによる環境保護意識の高まりにより、環境保護分野でもベンチャー企業の活躍が注目されています。地球環境を守りながら人々が快適に暮らすためのサービス、製品が創出できれば、大きな期待を集められるでしょう。
ベンチャー企業にはどんなことを期待されている?
これまで世界では、多くのベンチャー企業によってイノベーションが創出されてきました。そしてそのイノベーションにより、日々社会の大きな変革が生まれています。
「Apple」「Google」などの世界的企業も、初めはごく小規模な事業からのスタートでした。しかし今では、アメリカだけでなく全世界の人々へ便利なサービスを提供し続けています。
日本でも「ABEMA」でおなじみのサイバーエージェント、ヘッドハンティング式の人材サービスを手掛ける「ビズリーチ」など、革新的なビジネスによって社会貢献を行う企業が増えつつあります。
こうした“社会に役立つイノベーション”は、これから生まれるベンチャー企業にも期待されるものです。
【社会がベンチャー企業に期待すること】
- イノベーションによる新たな商品、サービスの提供
- 新たな事業の発見、創出
- 新たな雇用を生む
- 社会のニーズを満たす
- 経済発展への貢献
「ベンチャー企業を立ち上げたい」と考えたときには、このような「革新性」「新規事業、雇用などの創出」「社会貢献」といった価値が提供できる事業なのかをいま一度考えてみましょう。
革新を目指すならベンチャー企業の立ち上げを検討してみよう
新たな技術や斬新な発想で社会の変革、成長を促すベンチャー企業。もしあなたが「社会貢献に役立つアイデアを実現したい」と考えているなら、ベンチャー企業を立ち上げてみてはいかがでしょうか。
近年では国や自治体のベンチャー企業向け補助金、助成金のほか、民間団体による支援制度なども充実しています。まずはこういった制度を知るとともに、それらを活用しつつ、有利に起業できる土台作りを目指しましょう。十分な資金調達、および起業準備を行うことで、理想とする商品・サービスを実現化しやすくなるはずです。