ビジネスの世界では、「ビジネスパーソンは常に最新情報をキャッチアップすべし」という言葉をよく見聞きします。このキャッチアップという言葉、具体的な意味を知っていますか? 実はキャッチアップの意味は、シーンや業界によって意味・使い方が大きく変わります。
ここでは、キャッチアップの基本的な意味、それぞれの業界における使い方をご紹介します。頻出のビジネス用語として意味をしっかり把握しておきましょう。
キャッチアップそのものの意味
もともとキャッチアップは「追いつく」「夢中にさせる」「巻き込む」「遅れを取り戻す」という意味の言葉です。
転じてビジネスでは、知らない情報・知識を後追いで理解・把握することという意味で使われています。
- 新商品の詳細な情報をキャッチアップする
- 自社の同業他社が発表した新技術をキャッチアップする
- 先日の会議に出席できなかったため、議事録でキャッチアップする
そのほかには「資料作成をキャッチアップする」など、書類の処理に追われることをキャッチアップと呼ぶこともあります。
似ている言葉との違い
キャッチアップに似ている言葉のひとつに「キャッチ」「追走」があります。
キャッチとは、単純に「何かを得ること」を指します。「情報をキャッチする」「キャッチコピーを考える」というふうに、何かを掴む(=得る)という意味で使われますが、キャッチアップのような「知らなかったことや遅れを取り戻す」というニュアンスは含まれていません。
追走はキャッチアップとほぼ同じ意味ですが、追走のほうは「急いで追いつく」というニュアンスが強く、より情報・知識をどん欲に学ぼうという姿勢が反映されています。
業界別・キャッチアップの意味は?
一般的にキャッチアップは「知らない情報・知識を後追いで理解・把握する」という意味で用いられる言葉です。ただ、キャッチアップは業界によっても異なる意味合いで使われるケースがあります。
経済・産業用語の「キャッチアップ」
経済においては、ある国が別の国との差を縮めようとすることを「キャッチアップ」といいます。
たとえば経済、技術、インフラなどを語るとき、「発展途上国であるA国がアメリカを目標にキャッチアップしつつある」といった具合に用います。
放送業界の「キャッチアップ」
放送業界、とりわけテレビでは「再放送」という意味でキャッチアップが使われます。具体的には「キャッチアップ放送」「キャッチアップ配信」という使い方をします。
テレビを見ていると「見逃し配信」として配信サービスを案内するCMを見たことがあるかと思います。テレビ局自らが配信サービスで再放送を行うことで、違法な動画アップロードに対抗したり、テレビ局が運営する動画配信サイトへ誘導したりといった効果が得られるのです。
IT業界の「キャッチアップ」
IT業界では「最新情報を能動的にチェックする」という意味のほか、「ニュースリーダー(RSS)で記事を既読にする」という意味でもキャッチアップが使われます。
そもそもニュースリーダーには「キャッチアップ機能」があり、読み込んだ記事を既読として処理することで、新たな記事を読み込むことができます。
また、「ネットにアップロードされている画像を一括ダウンロードする」という意味でキャッチアップが使われるケースもあります。
医療業界の「キャッチアップ」
医療では「キャッチアップ接種」というふうに、足りないものを補うという意味でキャッチアップが使われるケースが多くみられます。
キャッチアップ接種とは、積極的推奨の差し控え等の理由でワクチンを接種できなかった対象者のために、公費で行われる予防接種のことです。日本では麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)、日本脳炎ワクチン、HPVワクチンなどが有名です。
また看護用語では、疾病・障害のある子どもに対し、一時的に成長が妨げられてしまったあとから症状などが改善され、身長・体重が成長に追いつくことを「キャッチアップ」と呼んでいます。
教育業界の「キャッチアップ」
教育業界で「キャッチアップ」とは、学びの遅れを取り戻したり、苦手・不足している知識を補ったりすることを指します。
企業で行う「キャッチアップミーティング」とは?
企業によっては、定期的に「キャッチアップミーティング」を実施する場合があります。
キャッチアップミーティングとは、一般的な「複数人が集まって行う会議」ではなく、1on1で行うミーティングのこと。上司と部下などの組み合わせで行われることが多く、次のような目的で行われます。
- 業務の進捗の細かな確認、すり合わせ
- お互いが持っている情報の共有、意見交換
また、キャッチアップミーティングは必ずしも「要件」を対象に行われるわけではありません。ときには、相手の考えや意見、仕事に対するスタンスなどを知るために行われる場合もあります。
事実、キャッチアップミーティングはランチの時間などを利用して行われる(ランチミーティング)場合も多く、通常のミーティング(会議)に比べればラフなミーティングであることがほとんどです。
キャッチアップ力を高めるにはどうすれば?
起業するにしろ雇われて働くにしろ、キャッチアップのためのアンテナを張り巡らせることは自身の成長やビジネスチャンスのゲットといった良い効果をもたらします。
キャッチアップする力を磨くには、以下を常に意識し、改善を続けていきましょう。
情報に対しどん欲にキャッチしにいく
情報社会の今、どのような業種・ジャンルにおいても日々新しい情報や知識が生まれ続けています。こうした情報を常にチェックすることを習慣化していくことで、ビジネスのヒントを得たり、業務を効率化する方法を知ったりすることができます。
とりわけ現代ではAIや機械学習などの最新のテクノロジーによって仕事の仕方、ありかたがガラリと変わりつつあります。特に自身でビジネスを行う場合は、既存のビジネス×最新のテクノロジーによる新たなビジネスが生み出せると強いです。成功を目指すのであれば、最新の情報をどんどんキャッチアップしていきましょう。
わからないことはすぐ解決する
わからないことがある場合は、人に聞いたり調べたりしてキャッチアップすることをおすすめします。
「わからないこと」をそのままほったらかしにしてしまうと、次に同じ問題に当たったときに解決できず、成長が止まってしまいます。成長を止めたくない人は、少しでも疑問に思ったら、解決するクセをつけてしまいましょう。
固定観念を捨てる
「○○は○○しなければならない」という固定観念を多く持っていると、思考停止に陥りやすくなります。思考停止は新たなアイデア、気付きのキャッチアップを阻害してしまうため、自身に固定観念がないかを振り返ってみることも大事です。
仕事に対するスピード・効率を意識する
仕事のできる人は常に作業の効率化・合理化を図り、“情報をキャッチアップする時間”を作っています。
よって、日頃から仕事に対するスピードを意識するとともに、「どうすれば効率化できるのか?」を検証しながら改善を目指しましょう。ムダな作業がある場合は思い切ってカットしてしまうことも大切です。
ときには断ることも必要
自分自身に余裕がないと、新たな知識・情報をキャッチアップすることは難しくなってしまいます。
キャパシティを大きくオーバーしている依頼や、やりたくない仕事を頼まれた場合には、思い切って断る選択肢も持っておきましょう。
新たなことを受け入れる余裕を常に作っておくことで、さらなるステップアップができます。
キャッチアップを意識しビジネスチャンスを掴もう
本記事では、キャッチアップの意味や業界ごとの使い方についてご紹介してきました。
一般的なビジネスにおけるキャッチアップは、世の流れを掴み、競争優位性を高めることを言います。同じ内容を教えてもらっても成長が早い人は、キャッチアップのスピードも早いことが大半です。成長が早ければ成果を出しやすく、自己肯定感を育んだり、新たな仕事にチャレンジしたりといったプラスの効果が生まれやすくなるでしょう。
またキャッチアップ力は、これから起業して自分の会社を持ちたいという方にとっても重要です。むしろ、自身でビジネスをスタートさせ、会社を成長させていく経営者こそ、常に情報をキャッチしながら柔軟な考え方で成長を続けるキャッチアップ力が必須だといえます。
日頃から意識してキャッチアップ力を高めることで、ビジネスのチャンスを掴みやすくなります。起業して成功したいと考えている方は、常に情報をキャッチアップし続けていきましょう。