大企業では普及率が約70%にも及ぶと言われている「EDI」。
企業間での契約書や受発注関係書類などのやりとり専用通信回線で行うシステムで、従来のFAXに代わるものとして、テレワークの導入に際してもメリットを大きく感じられたという企業も多いようです。
今回はそんなEDIについて、導入によるメリット・デメリットのほか、EDIの種類や導入の際の注意点などについて、詳しくご紹介していきたいと思います。
「EDI」とはどんなもの?
EDIとは、電子データ交換のことで、Electronic Data Interchangeの略称です。
企業間での商取引に関する文書を、専用回線やインターネットなどを用いて、電子データをしてやりとりをするシステムで、おもに契約書、受発注書、請求書、納品書などの帳票を扱います。
従来のFAXや郵送でのやり取りに比べて、データ管理の手間やペーパーレスをはじめとする経費削減にも繋がるため、販売・物流業界などの業界を中心に今では欠かせない存在となっています。
EDI導入のメリット
EDIを導入することで得られるメリットには、さまざまなものがあります。
1.業務の効率化
従来の企業間の商取引では、ExcelやWordなどで作成した文書をプリントアウトして製本し、封筒にいれて書留などで郵送をしたり、事前にFAXでやり取りをして内容を確認したりするなどの作業が必要でした。
EDIの導入によって、作成した帳票類を電子データとして双方でやり取りすることができるようになり、プリントアウトや郵送などにかかる手間を無くすことができます。
2.コストの削減
EDIで帳票類を電子化することで、プリントアウトするコピー用紙代の削減や、郵送費やFAX通信費の削減、またそれらの作業に関わる人件費の削減にも繋がります。
また、ペーパーレス化により書類の保管場所が不要になり、事務所の省スペース化にも役立ちます。
3.業務のスピード化
EDIでは、回線を利用して電子データをやり取りするため、取引先と帳票などのやり取りをリアルタイムに近いスピードで行うことができます。
また、データが取引先へと送れば、そのまま相手のコンピュータへと保存されるため、受注側にとっても、スピーディーに対応が可能となります。
EDIを基幹システムと連携することで、販売管理システムの情報から、帳票の自動作成や自動送信を行うことができ、業務のスピード化にも繋がります。
4.書類紛失のリスクを削減
EDIでは、帳票が電子化されたるため、郵送やFAXで必要だった受注側の受付手続きや開封作業が省略され、ダイレクトに担当者が受け取ることができるようになります。
従来のように、帳票が他の郵送物に紛れて別の部署へ行ってしまった、FAXが届かなかったなどというリスクが削減できます。
5.在庫管理の精度の向上
EDIを在庫管理に活用することで、在庫数が一定数に減った状態から発注を行うことができるため、急な欠品や過剰在庫を抱えるリスクを減らすこともできます。
伝票の手入力が不要になるため、帳票発行作業の誤入力などの人為的ミスも減らすことができ、データの精度が向上します。
EDI導入によるデメリット
大企業と比較して中小企業でEDIの導入が進まない要因にもなっていますが、EDIの導入は、企業間取引が少ない企業では、導入費用対効果が見合わないケースもあります。
また、取引を行う企業間では、互換性のあるEDIを導入する必要があるため、同じ企業と継続して多くの取引を行うことで、EDIによるメリットを多く感じられるでしょう。
EDIを導入する際は、導入にかかるコストに対して、取引においてどの程度活用できる見込みがあるかについて考慮し、しっかりと検討する必要があるでしょう。
EDIの仕組み
EDIは、メーカーと商品保管する倉庫とシステムを使ってつながることで、効率のよい在庫管理に役立ち、さらに、社内でも本社と店舗とでネットワーク構築することで、店舗にある端末を操作することで本社のコンピュータからの発注が可能となります。
このようなシステム連携の実現には、EDIのデータ変換の仕組みが役立っています。
EDIでは、取引先から送られてきたデータを、自社システムのコンピュータへと取り込めるように変換を行う仕組みとなっています。
変換できるデータは、以下のものがあります。
- データ形式の変換
- データコードの変換
- 文字コード
データ形式には、「固定長形式」「CSV形式」「XML形式」などがあり、自社のシステムに合わせたデータ形式へ変換しレイアウトを整えます。
たとえ同じ商品でも、企業によって登録している商品コードが異なる場合があります。
EDIでは商品コードなどのデータコードの変換も行います。
自社システムで扱える文字コードは企業によって異なるため、シフトJISやUnicodeなど、自社で取り込める文字コードへと変換します。
EDIの種類
EDIには、専用の電話回線を使うものと、インターネットのWebサーバーを利用した「Web-EDI」とがあります。
専用回線を使うEDIは、特定企業とやりとりをする専用回線が必要となり、通信インフラの構築が必須です。
EDIの専用回線には、取引先ごとに通信ルールを設定する「個別EDI」のほか、標準EDI同士であれば個別対応が不要となる「標準EDI」、特定の業界に特化した「業界VAN」の3種類があり、回線の種類によって使用の制限があります。
いっぽう、Web-EDIでは、インターネット回線を使用するため、通信回線を気にすることなくWeb上でやりとりが可能となっています。インターネットが接続できる環境であれば、どこにいても取引できるといった特徴があります。
Web-EDIへの動き
昨今では、専用回線を使ったEDIよりも、専用回線が不要でWEB上でやり取りを行い、導入コストも比較的抑えられるWeb-EDIを導入する企業が増えてきています。
その理由には、「2024年問題」と言われている「ISDN回線」が使えなくなるという問題も関係しています。
2024年1月以降、電話回線を使用したインターネット通信である「ISDN回線」が使えなくなるため、その前にWeb-EDIへと移行する企業が増えているのです。
Web-EDIの問題点
いっぽうで、Web-EDIには標準化されていないという問題点があります。
Web-EDIは、そのカスタマイズしやすさから、システムを自社独自の状況に合わせて構築している企業も少なくありません。
そのため、Web-EDIを使ったやり取りへの切り替えを考えるのであれば、取引先の企業ごとにEDIシステムの仕様を確認したり、調整したりする必要性もあるでしょう。
また、専用回線を使用したEDIは、ほかの通信網から隔絶された状態での通信であったため、セキュリティ的にも安全な状態での通信が可能でした。
それに対してWeb-EDIでは、インターネット回線を用いるため、不正アクセスのリスクが高まります。
Web-EDI導入の際は、不正アクセス検知を定期的に実施しており、システムのアップデートについても適切にされているものを選ぶとよいでしょう。また、運用サポートについても24時間365日体制で受けられるものを選ぶようにしましょう。
EDIについて、導入によるメリット・デメリットのほか、EDIの種類や導入の際の注意点ついてご紹介いたしました。
企業間での商取引が多い企業にとって、EDIを導入することにより業務の効率化やスピード化のほか、コスト削減やミスの削減など、得られるメリットは大きいものです。
いっぽうで、2024年問題もあり今までの専用回線によるEDIへの見直し対応も求められています。
これからEDIを取り入れようとする企業も含めて、Web-EDI導入の際の注意点や取引先との互換性などを確認し、業務改善へと繋げていきましょう。