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株式会社設立は一人でもできる?一人会社を作るメリット・デメリットは?

フリーランスや個人事業などで生計を立てている人の中には、株式会社を設立し、「一人会社」をつくる人もいます。とはいえ「会社を設立するのは大変そう」「どのようなメリットがあるのか」と疑問に思われる方もいるでしょう。

ここでは一人で株式会社を設立するメリット、デメリットを解説します。株式会社設立の流れや、株式会社と合同会社の違いについてもご紹介します。株式会社を設立するか迷われている方は、ぜひ参考にしてみてください。

株式会社設立は一人からでも可能

結論から言うと、株式会社の設立は1名からでも可能です。

【株式会社設立の条件】

  • 資本金1円以上を用意している
  • 取締役1名以上
  • 定款の作成、認証を受けたうえで法人登記をすること

この3つの条件を満たしていれば、一人でも株式会社を設立できます。

株式会社を一人で設立するメリット

個人事業から法人化するとなれば、どのくらいのメリットがあるのかが気になるところですよね。

まずは一人で株式会社を設立するメリットをチェックしてみましょう。

法人税が適用され、所得によっては税金が安くなる

株式会社を設立するメリットのひとつに「さまざまな節税ができる」点があります。

  • 青色申告の「損失の繰越」が9年間可能になる
  • 所得税が「法人税」に代わり、がっつり稼ぐなら所得税よりも税金が安くなる
  • 社宅、出張旅費規程等を利用して節税できる

特に大きなものが「法人税」です。

たとえば資本金1億円以下の中小企業であれば、年間所得800万円以下の法人税率は15~19%です(2023年3月31日まで)。年800万円を超える分の所得には23.20%の法人税が課せられます。

一方、個人事業で年間所得800万円を得ると、23%の所得税がかかります。中小企業であれば法人税率のほうが低いことがわかります。また個人事業で年間所得900万円を超えると、所得税率は33%となり、法人税のほうが低い税率になります。

損金算入(=経費計上)できる支出の範囲が広がる

株式会社を設立すると、損金算入できる範囲が広がります。

たとえば自身の給与として受け取る「役員報酬」は、支給要件を満たすことで損金(経費)にできます。
また退職金、生命保険料などの支出も損金として計上できるのです。

こうした費用、支出を損金算入することで課税所得を減らせれば、節税にもつながります。

信用度が上がり、資金調達しやすくなる

たとえ会社メンバーが一人であっても、「株式会社」というだけで信用度は格段に上がります。

会社化した時点で「法人格」を得られるため、個人事業に比べると社会的信用度は高いのです。
これにより融資や助成金、補助金などの資金調達もしやすくなり、より事業を成長・拡大させやすくなるでしょう。

雇用や営業面で信用を得やすい

個人事業を株式会社化すると、雇用や営業面でも有利になります。

企業の中には「法人としか取引をしない」というところも多く、個人事業で対等な取引をするのが難しいケースも見られます。取引の可能性が広がれば、事業の展開や成長も期待できるでしょう。

有限責任になるため、負債を個人で背負わなくてよい

株式会社を設立すると、会社の資産に対し「有限責任」となります。

会社が負債を負った場合の責任が「出資をした範囲のみ」となり、個人で弁済をしなくてもよくなるのです。

個人事業の場合は負債が生じると私財から弁済をしなくてはならない(無限責任)のため、事業が失敗したときに大きな借金を背負う可能性があるのです。

一人で株式会社設立するデメリット

一人で株式会社を設立するデメリットは、次の5つです。

個人事業に比べて税務申告が複雑になる

法人の税務申告は、個人事業の確定申告にくらべるとやや複雑です。

貸借対照表や損益計算書といった会計書類、税務申告に必要な書類を添えて納税するのですが、税の処理や計算などが複雑化するため、個人で税務申告を行うのは専門知識がないかぎり難しいでしょう。

税務申告を確実に行うには、税理士に依頼することが最善です。ただしその場合、依頼料が発生する点には注意しましょう。

法人の資産を個人資産へ自由に移動できない

個人事業は「プライベートのお金=事業のお金」であり、個人・事業のそれぞれで融通が利かせやすい特徴があります。たとえば生活費が足りないとき、事業用にプールしておいたお金を取り崩して生活に使う……といったことも可能です。

一方、会社を設立して法人となると、個人のお金と法人のお金はそれぞれ独立させて管理しなければなりません。
法人の資産を個人資産へ気軽に移動できないのです。

一人で株式会社をつくった場合、自身のもらえるお金は「役員報酬」として受け取ることになります。
しかし役員報酬は、損金として算入できるよう定額制(定期同額給与)にするのが一般的です。よって役員報酬額を頻繁に変えることは難しく、設定額によっては生活が苦しくなる、という可能性もあります。

10万円以上の会社設立コストがかかる

一人で株式会社を設立する場合、登記費用として約20~25万円の費用が掛かります。後述する「合同会社」で会社を設立したとしても、10万円は必要です。

また、会社設立に必要な「資本金」もある程度準備しておく必要があります。
法律上は資本金1円から株式会社が設立できるとはいっても、実際に資本金1円で起業するというのは現実的ではありません。金融機関や取引先からの信用性が獲得しにくく、資金調達、営業などで不利になりやすいからです。

信用を獲得するための資本金は300万円以上が相場といわれています。
スモールビジネスとして事業を行う場合であっても、相場以上の資本金は準備しておくほうがよいでしょう。

社会保険料が高くなるケースもある

株式会社を設立すると社会保険に強制加入となります。このとき、国民年金から厚生年金保険になることで、今までより保険料が高くなる可能性があります。

負担額が増えると将来もらえる年金額は増えるものの、一時的な支出が増えるので注意しましょう。

オフィス代や決算公告、税理士の顧問契約などのコストが発生する

一人で会社を設立する場合、自宅をオフィスとして利用したい方も多いでしょう。

個人事業の場合、賃貸マンションを拠点としていても問題なく事業ができるケースがほとんどです。しかし、法人化した場合は「商用利用」としてみなされ、管理会社から登記住所としての利用を断られることがあります。

このような場合は固定オフィスやシェアオフィス、バーチャルオフィスなどを利用して登記を行わなくてはなりません。

また、そのほかにも毎年行う「決算公告」の掲載費用(約7万円)が発生しますし、税理士を雇う場合は顧問契約のコストなどもかかります。個人事業に比べるとコストが高くなりやすい点には、十分注意しましょう。

一人で株式会社設立!登記の流れは?


一人で株式会社を設立したいとき、以下の流れで法人登記を行います。

【一人で株式会社を設立する際の法人登記の流れ】

  1. 会社の基礎情報(商号、事業目的、本店所在地、資本金、発起人の氏名と住所)を決める
  2. 法人印(会社実印)の作成
  3. 定款の作成、認証を受ける
  4. 資本金を銀行へ払い込む
  5. 登記の必要書類を準備し、法務局へ申請しに行く
  6. 社会保険、税務署等への手続き

費用としては約20~25万円+資本金を準備しておくとよいでしょう。

<内訳>

  • 法人印の作成費用(セットで1万~数万円)
  • 資本金(1円~、300万円以上が一般的)
  • 定款の認証費用(定款認証手数料3~5万円+収入印紙4万円。電子定款の場合は印紙代が無料)
  • 定款の謄本代(2000円程度)
  • 法人登記の登録免許税(15万円)

なお、株式会社の設立方法や登記の流れについては、こちらのコラムでくわしく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

会社の作り方マニュアル!会社設立の準備や手続き、起業にかかる費用を解説
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一人で会社設立するなら株式会社と合同会社どちらがいい?

株式会社は利益を追求する「営利法人」ですが、営利法人には「合同会社」もあります。

合同会社は「出資者が経営者であること」、「株式の発行ができないこと」が大きな特徴です。
株式会社は出資者、経営者が分離しています。株式を持っていなくとも経営者になれるのです。
一方合同会社は、出資者が「社員」として働きつつ、経営権も手に入れます。

一人だけの株式会社であれば出資と経営が同一になることも多いので、株式会社と合同会社の違いがあまりわからないかもしれません。

ただ、合同会社の場合は「株式発行」による出資を受けることができない、というのが大きな違いです。資金調達の手段や金額が限られてくるため、事業規模を拡大したいのであれば株式会社のほうがやや有利、といってもよいでしょう。

株式会社と合同会社の違いについては、以下のコラムも参考にしてみてください。

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一定以上の所得が見込めるなら一人でも株式会社設立を検討してみよう

所得税率と法人税率を比較すると、個人の所得700万円くらいからがボーダーラインとなります。
このぐらいの所得帯では、所得税率>法人税率となり、法人化したほうが結果的に節税できる、というわけです。
個人事業として700~800万円程度の所得が見込めるようであれば、法人化を検討してみるといいかもしれません。

ただし、法人化すると税務申告が複雑化したり、社会保険料が高くなったりするデメリットもあります。また事業にかかるコストは、個人事業に比べると高くなります。

一人で株式会社を設立するか迷った場合、こうしたメリットとデメリットを比較したうえで決定するとよいでしょう。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

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