法人成りとは? メリット・デメリットや必要な手続き、注意点について解説

個人事業主として事業が軌道に乗ってくると、「法人成り」を考える方も多いでしょう。ここでは、法人成りのメリット・デメリットや、法人成りに必要な手続きの流れをご紹介します。

法人成りする場合の注意点についても解説しているので、「法人になるべきか」と迷っている方はぜひチェックしてみてください。

法人成りするメリット・デメリットは?

「法人成り」とは、個人事業主が法人登記し、会社になることです。

個人ではなく「法人格」を与えられた組織へと変わることで、税金面での優遇などさまざまなメリットがあります。

その一方で法人ならではの手間、コスト増などのデメリットもありますので、それぞれを詳しく見てみましょう。

個人事業主が法人成りするメリット

個人事業主が法人成りするメリットは、以下の4つです。重要なポイントをチェックしてみましょう。

税制優遇や経費計上の範囲が広がる

法人成りの大きなメリットとして「税制優遇があり、経費の計上範囲が広がること」が挙げられます。

【法人成りしたあとの税制優遇や経費計上について】

  • 売上が大きくなると、個人事業の所得税よりも法人税率(15~23.2%)のほうが低くなる
  • 役員報酬(社長への給与)が経費計上でき、役員報酬自体にも給与所得控除が適用される
  • 退職金を損金(経費)として計上できる
  • 法人成りしてから2年間は消費税の納付が免除(※資本金額1,000万円未満などの条件あり)
  • 赤字(欠損金)の繰越控除が最大10年間できる

信用度が高まる

法人は、登記などの法的な手続きを経て設立します。

会社の重要事項は第三者が閲覧できる「登記簿謄本」に記載されるため、個人事業主に比べて対外的な信用度も高くなります。

他社との取引はもちろん、販売・宣伝・採用活動においても、法人のほうが信用されやすく有利になるのです。

有限責任になり、万が一のときのリスクが少なくなる

事業に失敗して負債が生じた場合、個人事業主はその全ての責任を負います(無限責任)。
自身の私財から負債の補てんをしなければならないケースも多いでしょう。

一方、法人(※)の場合は「有限責任」となり、会社が倒産しても“出資した範囲内”のみの責任ですみます。
(※株式会社や合同会社、合資会社の有限責任社員)

たとえば株主であれば、出資範囲は「株式購入に使ったお金」となり、自身の資産を切り崩して返済などを行う必要がありません。万が一のときのリスクが減らせるのは、大きなメリットといえるでしょう。

事業継承がしやすい

個人事業の場合、仕事を辞める際には「廃業」となり、事業を受け継ぐことはできません。

一方、法人は社長が退任・辞職したとしても、新たな社長へと交代すれば問題なく事業を続けられます。

個人事業主が法人成りするデメリット

個人事業主が法人成りするデメリットは、以下の4つです。

法人設立や社会保険料のコストがかかる

法人は個人事業のときよりも税制優遇は手厚いですが、それに比例して「かかるお金」が増える点には注意しましょう。

法人成りする場合、設立費用で10~数十万円程度のコストがかかります。
また法人になることで社会保険に加入する必要があるため、会社負担分の社会保険料がかかるようになります。

赤字でも住民税が発生する

法人が納める税金には、法人税、法人住民税(所得割+均等割)、法人事業税、消費税などがあります。
このうち「法人住民税の均等割」については、赤字経営であっても納付義務が生じます。
「均等割」は資本金や従業員数によって金額が決まるためです。

経理や税務などの事務作業が増える

法人成りすると、個人事業のときに比べて経理・税務などの事務作業が複雑になります。

自身で手が回らない場合は、人を雇う、専門家に依頼するなどの対策が必要になります。
当然、その場合はコストもかかってくるでしょう。

役員報酬は1年間毎月同額になる

個人事業は、経費などを引いた利益がそのまま自分の生活費として使えます。

一方役員報酬は、一度決めると1年間は給与が毎月定額となります。
人によっては個人事業のときよりも生活費に使えるお金が少なくなる場合もあり、デメリットに感じるかもしれません。

ちなみに役員報酬額は変更もできます。
ただし、決算から3ヶ月後以降に変更をすると、役員報酬が経費計上できなくなってしまい、税負担などに影響が及ぶこともあります。
報酬面に関する自由度は、法人成りしたあとの方が低いといえるでしょう。

法人成りに必要な手続きは?

個人事業主から法人成りするには、以下の手続きが必要です。

  1. 法人登記をする
  2. 個人事業の「廃業」手続き
  3. 個人事業の資産を移行する
  4. 法人設立後の手続き

それぞれの流れや手順を見ていきましょう。

1.法人登記をする

個人事業主から法人成りする場合、法人登記を行います。

【法人登記の流れ】

  • 定款の作成
  • 定款の認証(株式会社の場合)
  • 資本金の銀行払い込み
  • 設立登記申請

法人登記の手続きについては、こちらの記事も参考にしてみてください。

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2.個人事業の「廃業」手続き

法人設立後は、個人事業を「廃業」する手続きを行います。
「廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」へ必要事項を記入し、税務署へ提出しましょう。

参考リンク:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

【個人事業の廃業時に提出が必要な書類】
・廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)→税務署へ

【必要に応じて提出する書類】
A.税務署へ提出する書類
・所得税の青色申告の取りやめ届出書(※青色申告をしていた人)
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書(※従業員を雇用していた場合)

B.都道府県税務署へ提出する書類
・個人事業税の申告書および個人事業税(個人事業税を納めていた場合)

なお、廃業した年度の事業所得については、確定申告が必要です。
毎年行っているのと同じように、翌年2~3月に確定申告を忘れないようにしましょう。

【廃業後に必要な確定申告は2つ】
・廃業した個人事業の確定申告(翌年の2月16日~3月15日)
・法人成りしたあとの確定申告(法人税と法人事業税の申告/事業年度が終了した日の翌日以降、2ヶ月以内)

3.個人事業の資産を移行する

個人事業で所持していた「資産」は、法人成りする際に引き継ぎをおこないます。

この資産にはお金や不動産などのプラスとなるものだけでなく、負債も含まれます。
おもに3つの資産移行方法がありますが、それぞれ一長一短あるため、資産の性質・内容に応じて最適な方法を選びましょう。

【資産の移行方法】
・売買契約:資産を個人から法人へ譲渡する。法人は売却した分の代金を個人へ支払う。
・現物出資:資産の“時価”を算定し、相当額を「資本金」として株式を発行する。
・賃貸契約:個人の所有資産を法人に貸す。個人側は不動産収入を得ることになり、確定申告が必要。

4.法人設立後の手続き

法人成りしたあとは、さまざまな手続きが必要になります。

  • 法人税の手続き(税務署)
  • 法人住民税、法人事業税の手続き(都道府県、市区町村)
  • 健康保険と厚生年金の手続き(年金事務所)
  • 労働法に関連する届出(労働基準監督署)
  • 雇用保険の届け出(ハローワーク)
  • 業務の許認可、契約物の名義変更
  • 法人銀行口座の開設(銀行等)

それぞれ手続きを行う場所や必要書類が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

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個人事業主から法人成りするときの注意点は?

個人事業主から法人成りする際には、注意すべきポイントもあります。

会社→個人事業主に戻ること(個人成り)は難しい

いちど法人成りして会社を設立したあと、個人事業主へ戻ろうとするとかなりの手間とお金がかかります。

【法人から個人事業主へ“個人成り”する手順】
①株主総会の開催、会社の解散決議をおこなう
②「解散申告」で事業を停止させる
③「精算申告」登記簿から法人格を消す
④会社の資産を処分し、残った純資産は株主に返金する
⑤法人の消滅完了
⑥事務所・店舗の原状回復、在庫処分など

また会社の廃業に際し、精算申告にかかるお金が41,000円、官報公告に掲載する「廃業公告」で40,000円がかかります。
最低でも合計80,000円以上かかるうえ、税理士や司法書士などに手続きを依頼した場合は依頼料も必要です。

法人成りをしたあとは責任を持って経営をするとともに、廃業にはかなりの労力を割かなくてはならないことを知っておきましょう。

法人成りのタイミングによっては負担やコストだけが増える場合も

法人成りするとさまざまな“税制優遇”がありますが、その一方でコストや経理業務の増加などのリスクもあります。売上があまりないうちに法人成りして、メリットよりデメリットが勝ってしまうのは考えものです。

法人成りする場合は、以下のようなタイミングで検討するとよいでしょう。

【法人成りに向いているとされているタイミング】

  • 個人事業の利益が800~900万円になったとき
  • 2年前の売上が1,000万円を超えたとき
  • 前年の前半6ヶ月の売上が1,000万円超、または人件費が1,000万円超となった場合
  • 取引や融資、採用における「信用性」を高めたいとき

個人事業の利益が800~900万円になったとき

個人事業の利益(合計所得)が900万円以上になると、所得税率が「33%」となり、法人成りしたときの法人税率(15~23.2%)よりも納税額が高くなる可能性があります。

また法人成りすれば生命保険料が全額控除できたり、赤字の10年間の繰越ができたりといった経理上のメリットも多く、個人事業主でいるよりも差し引ける控除額が増えます。結果的に節税につながる可能性も高いでしょう。

2年前の売上が1,000万円を超えたとき

その他のタイミングとしては、2年前の売上が1,000万円を超えたとき、法人化を検討するケースも多いでしょう。個人事業主が売上1,000万円を超えると「課税事業者」となり、その年の2年後から消費税の納付義務が発生します。

しかし、資本金1,000万円未満で法人成りすれば、その年から2年後までは免税事業者となります。

前年の前半6ヶ月の売上が1,000万円超、または人件費が1,000万円超となった場合

前年の1~6月の売上が1,000万円を超えるか、人件費が1,000万円を超えた場合は、個人事業主でもその翌年(=今年)から「課税事業者」となります。

しかし、9月1日に法人成りし、決算月を3月にして1期目を7ヶ月にすると、最長2年間は消費税の納付が免除されます。

取引や融資、採用における「信用性」を高めたいとき

個人事業主に比べ、法人は取引・融資・採用においての信用性が高くなります。
そのため、事業展開・拡大などをしたい場合、法人化することでスムーズに戦略を進められるでしょう。

法人成りはメリットが大きくなるタイミングが理想

個人事業主から法人成りすると、税制や経費計上などの面でさまざまなメリットが得られるようになります。特に売り上げが800~900万円を超えるころには、法人化のメリットである「税率の違い」を顕著に感じられるようになるでしょう。

ただし、法人成りのタイミングが早すぎると、デメリットの方が多くなってしまう可能性もあります。税金額や対外的な信用性などを試算、考慮したうえで、法人成りするタイミングを考えてみましょう。

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