働き方が多様化する近年では「起業家」という言葉を耳にする機会が増えました。その使われ方は時と場合によりまちまちですが、本来はどのような意味を持っているのでしょうか。
ここでは起業家の定義、起業家に必要な「起業家精神」について解説します。起業を考えている方は、いま一度原点に立ち返って考えてみましょう。
起業家とはどんな人?言葉の意味・定義をチェック
起業家とは「自分で事業を立ち上げ、興す人」という意味です。英語では「アントレプレナー」と呼ばれます。
広義では「起業する人」という意味でも使われますが、狭義では「起業=法人として会社を設立する人」という意味で使われるケースがほとんどです。
日本においては「ベンチャー企業」の設立者や、スタートアップ(急成長を遂げ、会社の売却や株式公開などを目標にする会社)の創設者などに使われることが多くみられます。
「起業」という言葉は、会社員が週末だけ副業をしたり(プチ起業)、個人事業主が事業をスタートしたりする場合にも使われる場合があります。
ただし、個人が事業をスタートする場合は「開業」と表現し、起業と区別されるケースがほとんどです。これはビジネスをスタートする方法が異なるためです(登記して法人を設立するか、開業届を提出するか)。
実業家・企業家・事業家・経営者と起業家はどう違う?
世の中には「実業家」「企業家」「事業家」など、起業家によく似た言葉があります。また、起業家と同様に「経営者」という言葉も耳目を集めています。
これらと起業家には、どのような定義の違いがあるのでしょうか?
「実業家」「企業家」「事業家」「経営者」それぞれの特徴をご紹介します。
実業家
実業家は社会に不可欠な生産、流通、販売といった「実業」で事業を行う人を指します。とりわけ農業や工業、水産などの業界で事業を営む人は、実業家と呼ばれるケースが多いでしょう。
なお、複数の事業で成功を収めた人に対しても「実業家」という言葉が使われる場合があります。
企業家
企業家は「創造力をもって企業を改善し、変化・発展させる人」というニュアンスの言葉です。
ただ経営を行うだけでは「企業家」とは呼ばれません。会社を新たにつくるというよりは、企業の成長に寄与する存在と捉えてよいでしょう。
事業家
事業家は「事業を成功させ、会社の規模を大きくする人」を指します。
特にスタートアップなど、起業後の会社に対し事業成長を実現させた経営者は「事業家」と称されるケースが多いです。
経営者
経営者をかんたんに説明すると「既存の事業を経営する人」と表現できるでしょう。
起業してそのまま経営に携わる人は経営者とも呼べますが、経営者は必ずしも「起業家」ではありません。
雇われのような形で途中から社長になったり、事業を承継して社長になったりした場合、起業そのものには関与していませんが「経営者」となります。
起業に向いている人が持つ「起業家精神」とは?
ビジネスアイデアを考えていざ「起業したい」と思ったとき、「自分は起業家に向いているのか?」といった疑問、不安が頭によぎる方は少なくないでしょう。
現在ビジネスシーンで活躍している起業家には、スキルや考え方などにおいて共通点があります。ここではその共通点を「起業家精神」とし、順にご紹介します。
以下に当てはまる方は、起業家に向いていると思ってよいでしょう。
- 考えるより行動が得意
- 好奇心旺盛で新しいものが好き
- 柔軟な考え方、発想ができる
- 自己管理能力に自信がある
- 何かに没頭できる力を持っている
- 責任感が強い性格である
- リスクを背負うことに抵抗がない
考えるより行動が得意
起業家にとって特に重要なスキルは「行動力」です。
頭であれこれアイデアを考えたり、計画を練ったりしても、行動に移さなければ変化は起こりません。
こと起業に関しては「行動してから改善点を考え、方向性を修正する」というスタイルのほうが成功しやすいといえます。
よって、行動力のある人物は起業にも向いているといえるでしょう。
好奇心旺盛で新しいものが好き
起業家には「好奇心」も大切です。起業して成功を収めるには、常に「新たな価値」を提供しなくてはなりません。日ごろから周囲の出来事や世のトレンドなどに強い興味・関心を抱ける人は、新しくもニーズのありそうなビジネスへの嗅覚も鋭いもの。
好奇心旺盛で新しいものが好きな人は、それだけでビジネスチャンスを掴みやすくなるので、起業家にも向いているといってよいでしょう。
柔軟な考え方、発想ができる
ビジネスを興すには「軸になるビジョン」が重要ですが、その一方で「柔軟な発想・思考ができること」も大切な要素となります。
柔軟な考え方ができる人は、人の意見を受け入れて活かしたり、さまざまな事象からヒントを得たりして事業へと活かせるからです。
頑固で自分のやり方にこだわる人よりは、状況に応じ柔軟な対応ができる人の方が起業家向きといえるでしょう。
自己管理能力に自信がある
自身が代表者として起業したあとは、経営に関するさまざまなことが自己責任となります。
事業を継続するにはスケジュール管理だけでなく、健康管理や業務効率、生産性、モチベーションといった部分まで自己管理する必要があるのです。
自己管理が苦手な人でも起業自体は可能ですが、その後の成長率から考えれば、自己管理能力に長けている人の方が起業家として活躍しやすいでしょう。
何かに没頭できる力を持っている
起業家として成功を収めるには、誘惑や飽きといった感情に左右されることなく、ひとつのことに没頭できる力が必須となります。「目標に向かって淡々と作業を積み上げていく力」といってもよいかもしれません。
起業から事業が軌道に乗るまでの期間は、売上を伸ばしつつ経営を安定させるという大きなミッションを抱えることになります。この間にはさまざまな誘惑があったり、諦めや挫折といった感情を抱いたりする場合もあるでしょう。
事業の成功を妨げるものに目もくれず、一心不乱に事業の成功へと走り続けられる人は、起業家にピッタリの性格といえます。
責任感が強い性格である
起業家には「自責思考型」の人が向いています。
自責思考とは何かあったときに「自分に責任がある」と考えるという意味です。
世の中には失敗を他人のせいにする人(他責思考型)も多いですが、失敗を人のせいとして捉えていれば一生成長しません。しかし、他人の失敗に対しても「自分がああしていれば、この人が失敗しなかった」というふうに考えられる責任感の強い人は、失敗から多様な学びを得られます。
起業においても、こうした責任感の強さは成功につながりやすい要素だといえるでしょう。
リスクを背負うことに抵抗がない
起業家精神のある人の多くは、リスクを背負うことに抵抗がありません。そもそもリスクゼロでの起業というのは難しく、成功を狙うほどリスクが大きくなりやすいのは当然のことです。
たとえリスクを背負うことになっても、リスクそのものを前向きに捉え、原動力として利用できる前向きな人は、起業家適性が十分にあるといえます。
起業家になるステップとは?
起業家として事業を始めるには、以下のステップを踏むことになります。
- ビジネスアイデアを考える
- 起業目的を考える
- 段階的な目標決め
- 起業形態(個人or法人)の決定
- 資金調達
- 事業開始
ビジネスアイデアはこれから始める事業の「核」となるものです。「困ったこと・自分ができること・世間のニーズ&トレンド」を考慮し、具体的なアイデアとして煮詰めていきましょう。
このとき事業計画書を作成し、実現可能なアイデアなのか検討してみるのもおすすめです。
またアイデアと同時に「何を目的に起業するのか」を明確にしておくことも大切です。目的のないまま起業した場合、事業にブレが生じて上手くいかなくなることが多いからです。
目的が定まったら、起業後の目標(初月、3カ月後、半年後……)を設定します。実現可能な範囲での目標が望ましいでしょう。
その後、実際に起業するにあたって必要な「起業形態」を決めたり、起業に必要な資金調達をしたりといった準備を進めていきます。数々の準備を経て事業をスタートしたあとは、「継続」するための戦略を考え、生き残りを目指します。
起業家になるには「起業したい」という強い意志が重要!
「起業」というと自由で夢のある印象ですが、起業家として実際に成功を収められる人はごくわずかなのが現実です。
そのような中で起業して成功するには、資金や環境はもちろんのこと、「ビジネスアイデアを実現したい」という強い意志が必要になります。意思なき起業は軸になるものがなく、やがて頓挫する可能性が高いでしょう。
また事業の成功には、常に最善の策を考えて成長を目指す「向上心」も必須です。
起業してビジネスの成功を収めたい方は、慢心することなく努力を欠かさないことを意識してみてください。