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NPO法人の給料はどんな仕組みで支払われる?原資や役員報酬の注意点についても解説

社会貢献を目的に活動する「NPO法人」では、一般的な会社と同じように職員を雇用できます。その際には「給料」の支払も当然可能ですが、非営利組織であるNPO法人はどのように給料を支払うのでしょうか?

ここでは、NPO法人の給料の支払いシステムをご紹介。さらに、役員へ支払う報酬、給与の仕組みや注意点についても解説します。これからNPO法人を設立したいと思っている方は、ぜひ参考にお読みください。

NPO法人の給料の原資は何?どのように支払われる?

NPO法人は“非営利法人”のひとつで、おもに教育や福祉、子育て、地域振興や人道支援などの活動を行う団体です。

活動を行うためには人手が必要になるので、NPO法人では設立時に登録する「役員」のほか、一般的な企業のように職員を雇用できます。

ただ、そこで気になるのが“給料の原資”です。
「NPO法人は非営利組織だから、事業で利益を得られないのにどうやって給料を支払っているの?」と思われがちですが、実際にはNPO法人でも事業を営むことができます。

また事業で得た利益は職員や役員に給与、報酬、賞与として還元することも可能です。
さらに、NPO法人では寄付や補助金、助成金などを原資として職員・役員へ支払うお金を捻出しています。

団体によっては以下の複数の原資を組み合わせて職員・役員へお金を支払っています。

【NPO法人が支払う給料の原資になる収入】

事業で得た収入NPO法人で手掛ける事業収入
外部からの寄付金個人からの寄付、企業協賛による財産
補助金や行政委託収入国や自治体から給付された補助金や、行政から委託された業務の収入
助成金財団などの公募によるNPO法人向けの助成金

そもそもNPO法人は、事業を通じて得た利益(財産)を株主等へ分配しない法人を指すため、事業そのものを禁じられているわけではないのです。

また、給料の支給額には上限がないので、NPO法人ごとに自由に給与額を決定できる点も覚えておきましょう。

団体ごとに大きく異なる!NPO法人の「給与テーブル」とは?

NPO法人の給与テーブルは、団体規模とポストによって大きく変わります。

たとえば数か国にまたがって活動しているような大規模NPO法人と、草の根活動的な小規模NPO法人では、前者のほうが給与水準も高く、安定しているケースが多いです。
この辺りは一般的な会社等とあまり変わりません。

また、ポスト(役職)によって給与額が変わる点も同様です。
役職としての採用と役職なしの採用では、当然前者のほうが給与額も高くなります。

「事務局長」などの重要ポストになれば、ヒラ職員の2倍程度の給与になるケースも多いのです。

NPO法人の給与水準は活動内容によっても違う?

NPO法人の給与水準は、活動内容によっても大きく変わる傾向にあります。

たとえば教育支援活動を行っているNPO法人は、平均400~500万円が相場。他の活動をしているNPO法人よりも高水準な給与テーブルを設けているケースが多いです。

次いで中間支援(NPOやボランティアを支援する団体)や人権支援を行っているNPO法人は、軒並み年収300~350万円が相場です。保育園事業やフードバンク事業についてはさらに低くなり、年収300万円を切るケースが多いようです。

ただし、これはあくまでも『平均値』のため、実際の給与額にはかなりばらつきがあるのが事実。
NPO法人によっては豊かな原資を保有しており、一般企業と変わらない水準の給与を支払っているところもあります。

運営側として給与テーブルを考える場合は、同業のNPO法人を参考にしつつ、自団体で人件費に割ける資金がどれぐらくいあるかを考慮して決めるようにしましょう。

NPO法人でも給与から税金(所得税)が引かれる

ちなみに、NPO法人から支払う給与にも「所得税」がかかります。

所得税は一般企業と同じく“給与から源泉徴収するスタイル”で納付します。

さらに、NPO法人で正職員として働く人は、社会保険(団体保険)や労災保険、雇用保険へ加入することも可能です。社会保険に加入した職員は「第2号被保険者」となり、健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料が給与から天引きされます。

労災保険については一般企業と同じく、従業員側の負担額はありません。NPO法人側が保険料を支払います。

よってNPO法人を立ち上げる際は、徴収する税金、社会保険料の知識を身に付けておきましょう。ふりがな

役員に報酬を支払う際の注意点とは?

NPO法人の設立には理事3名、監事1名以上の役員が必要です。

役員に対しては「役員報酬」を支払うことができますが、その際には注意点もあります。

  • 役員報酬を受け取れるのは全役員の3分の1の人数まで
  • 役員報酬が受け取れない役員に対しては「職員兼務」として給与を支給する
  • 役員給与を損金算入(経費にすること)したいなら定期同額給与に
  • 賞与を支払う際は「事前確定」をする
  • 使用人兼務役員なら通常の給与となり、損金算入できる

それぞれくわしく見ていきましょう。

役員報酬を受け取れるのは全役員の3分の1の人数まで

NPO法人では全役員の3分の1までの人数に対し、役員報酬を支払うことができます。
たとえば理事5名、監事1名の場合、役員報酬を支払えるのは3分の1となる『計2名まで』となります。

役員報酬が受け取れない役員に対しては「職員兼務」として給与を支給する

役員報酬を受け取れない役員には、職員を兼務してもらい、その労働の対価を「役員給与」として支給します。
ただし監事については職員兼務ができないので、役員報酬を支払うことになります。

NPO法人ではこのルールにより、監事には役員報酬を支払い、理事たちには職員兼務をしているとして役員給与を支給するスタイルが一般的です。

役員給与を損金算入したいなら定期同額給与に

役員給与は経理上の損金(経費)として算入できます。ただしそれには「定期同額給与」にする必要があります。

定期同額給与とは?
あらかじめ決めた支給基準に基づき、毎月・毎週・毎日など規則的に反復して給与を支給すること。

わかりやすく言うと、「毎月同日に30万円の役員給与を支給する」などの定額支給でないと経費にできない、ということです。
「事業が好調だったので次月分を増やす」「3ヶ月分をまとめて支給する」といった支給方法は、定期同額給与に該当しないため損金として算入できないので注意してください。

なお、定期同額給与として一度決めた役員給与については、原則として変更しないほうがよいでしょう。
事業年度の途中で変更した場合、変更後の役員給与が損金算入できなくなります(※)。

※役員の地位変更、業績悪化などの重大事由を除く

どうしても変更したい場合は、事業年度の開始日から3ヶ月以内に変更するとよいでしょう。この期間内であれば「通常改定」として、変更後の役員給与も損金算入ができます。

役員給与が損金(経費)として認められないと、実際には支出があるのに税金が高くなる……といった可能性があります。確実に役員給与を損金算入したい場合は、定期同額給与で支給するようにしましょう。

賞与を支払う際は「事前確定」をする

NPO法人の役員へ賞与を支払う場合、事前に税務署へ届け出をしなくてはなりません。

これを「事前確定届出給与」といいますが、届出なしで賞与を支払うと損金算入できなくなってしまいます。

また、届出をした金額と実際の支給額が異なる場合も、損金算入ができません。

賞与の金額によっては税金へ大きな影響が及びますので、賞与の支給を予定しているのであれば必ず税務署への届出を行いましょう。

使用人兼務役員なら通常の給与となり、損金算入できる

NPO法人では役員を「使用人兼務役員」に据え、通常の“給与”を支給することもできます。

使用人兼務役員になれるのは、代表・副・専務・常任などの役職が付いていない役員です。

職員と同じく労働の対価として給与を支給する形式となるので、給与の増減があってもすべて損金算入できるのが特徴となっています。

勤務日数や出来高に応じて給与が変動するスタイルのNPO法人であれば、役員を使用人兼務役員として置くとよいでしょう。

NPO法人を設立するなら給与の支払方法についても理解しておこう

NPO法人は非営利の組織ですが、事業の利益で職員、役員へ給料を支払うことは何ら問題ありません。

給与テーブルは団体規模やポストによって大きく異なりますが、これからNPO法人を新規立ち上げする場合は、類似のNPO法人の例を参考にすると決定しやすいでしょう。

また、役員報酬に関しては「全役員の3分の1まで」「定額同期または事前確定しないと損金算入できない」というルールが設けられているため、こちらも忘れないように注意しましょう。

多くの人を雇えば、より大きな規模の活動を展開しやすくなります。そのためには、本記事を参考にしながら職員・役員の給与や報酬についてしっかりと理解しておきましょう。

なお、NPO法人の設立手順については以下の記事で解説しています。

NPO法人の設立は自分でもできる?設立手順や必要書類、費用や助成金について解説!
社会貢献活動のためにNPO法人を設立したいとき、「自分ひとりでNPO法人を設立できるのか」という点が気になるでしょう。ここではNPO法人を設立する手順や費用、助成金について解説。さらに、NPO法人を設立する際の注意点についてもご紹介します。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

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